◆お稽古のお菓子◆

2008年9月


金沢 村上 ”桔梗” 東京目黒八曇 つ久し ”黒豆大福”
京都 二條若狭屋 ”やき栗” 神田駿河下 御菓子処 さゝま ”初秋”
松江 彩雲堂 ”彩紋(さいもん)” 京菓子司 末富 ”うすべに”
銀座かずや ”かずやの煉”

2008.9.26 金沢 村上 ”桔梗”

京都と並んで、茶処・菓子処としても有名な金沢には、菓子にまつわる言葉があるんだそうです。
家のお使いをした子どもに、ご褒美として渡す「おてま」
来客が帰る際に、茶菓子を、半紙に包んで渡す「お道忘れ」
ねぎらいと、感謝の気持ちを、手のひらに乗るほどの小さな包みに、そっと込める、和の心ですね。

茶の湯とともに栄えた、加賀百万石の菓子文化。
その繊細な伝統の技には、人と人を繋ぐ細やかな心配りまでも、宿っているのかもしれません。

色鮮やかで、桔梗の花型も美しい上生菓子。
中の小豆餡がこし餡で、外の着色された手亡豆餡と、一体化された甘さ控えめの上品な味わい。
上生菓子は、季節によって様々な形に変わるそうですが、加賀の華やかさを感じる風情でした。 



2008.9.26 東京目黒八曇 つ久し ”黒豆大福”


  目黒区の八雲にある「つ久し」。
こちらの黒豆大福は、1日200個前後しか販売しないという人気の商品で、
早い時は、昼ぐらいに売り切れてしまうそうです。
今回は新宿高島屋さんの銘菓百選コーナーで、木曜日限定で入荷するのを、予約をして買い求めました。
菓子処の雰囲気を体感して求めるのも楽しみのひとつですが、
最近はこういった名匠銘菓が、手軽に手に入れられるのは有難いことです。

さて、大福ですが、外見からも白いお餅の中に、大粒の黒豆の何粒かが見え隠れしていて、存在感があります。
その名の通り ”黒豆大福”です。大きさは、一般的な大福よりも少し小ぶりです。
いただいてみると、食べ応えのある大粒の黒豆の存在感が、
今度は目ではなく、口の中でその感触をアピールしてくれます。

お餅は自前の餅を使用し、手をかけて作っているそうです。
黒豆は、丹波産の最高級のものだそうで、粒が大きく、しっかりしています。
写真で切り口が白くなっているところがありますが、ナイフを入れてつぶれないほどの硬さなのです。
程よい甘さの小豆は、北海道十勝産だそうです。美味しい餡子です。
この餡がほどよい甘さの粒餡で、はっきりとした味の丹波黒豆の粒との食感が楽しく、とても気に入りました。

お餅のおいしさを引き出した豆大福ですが、日持ちは1日です。

いただくのは購入したその日がベスト。翌日は表面が硬くなります。



2008.9.26 京都 二條若狭屋 ”やき栗”

 総本家若狭屋で修業した初代が、暖簾分けを受け、二條若狭屋を創業したのは大正の初めの頃だそうです。
その初代は画家を志したこともある芸術家肌の人物で、文章もうまく、
NHKラジオなどにもレギュラー出演していたということです。
工芸菓子や献上菓子などで評判を博する一方、
アイデアマンらしく新聞などに奇抜な広告コピーや図案を発表して、世間の意表をついたりもしたのだそうです。

この二條若狭屋の代表的銘菓といえるのが、やはり初代の考案した家喜芋。
丹波山芋(つくね芋)を主原料にした皮で餡を包んで軽く焼いた菓子で、
近衛文麿氏が首相の折、京都で園遊会が催され、初代が献上したもので、好評を得たといいいます。

今日いただいた”やき栗”は当代の作で、初代が作った菓子と並ぶ、人気商品になっているそうです。
丹波栗を、一個まるごと栗餡に包んで、とき卵をつけて焼きあげたお菓子です。

 栗は、丹波や九州、四国など、その年最も出来のいい産地のものを選りすぐるそうですが、
 形を崩さないようにするのが難しいそうです。

香ばしく風味がよくほのかに甘く、栗の自然の味わいを楽しめ、
焼いた栗というその風情からは味覚の秋、実りの秋をも感じました。



2008.9.21 神田駿河下 御菓子処 さゝま ”初秋”(牛皮)


  

  
昭和4年(1929年)に、笹間繁氏が神田小川町に、ササマパン店を開業。
その後、昭和6年(1931年)頃より、和菓子店を現在の駿河台下に開店。
昭和9年(1934年)にササマパン店を閉店し、和菓子専門店となり、
開業の時より茶道に使用できる和菓子を目指し、現在に至って居るそうです。

御茶ノ水の 「おつかいもの」 といえばこちら。
神保町で、本屋さんの帰りがけに立ち寄るといった方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
1個 125円 さゝまの定番である”松葉最中”は、”抹茶”というより、煎茶にマッチします。

本日のお稽古では、1ヵ月ごとに内容が変わるという中の、季節にあった生菓子をお菓子を頂きました。

周りが求肥で、中の餡は白の漉し餡です。蔕(へた)は練切で出来ています。
秋になり、柿の実も大きく膨らみ赤くなる前を、表現しているそうです。

甘すぎず、優しいお味。
茶道に使用できるお菓子を目指しているという、菓子作りの心遣いを感じます。
お抹茶に合います。

控えめな甘さは、あえてそうしたという感じがいたしますし、
求肥で周りをこしらえたあたりは、扱う側のことも配慮してのことかしら?とも思いました。
茶席菓子はこういったことが、茶道をたしなむ方の間では評価されるのかもしれません。

季節を感じる鮮やかな色合いが、茶室に秋を感じさせてくれました。
「季節を愛でる」ですね~。

お菓子のご案内に、あえて ”求肥” を ”牛皮” としたのは、お店のこだわりなのでしょうか?
羊羹の由来にある、何かを感じました。

調べてみたところ、
漢字で牛皮や牛肥とも表記するのは、古い時代の求肥が、もち米の玄米を用いて作られたために
色が浅黒く、牛の皮に似ていた為と言われていたからだそうです。
日本では獣食を忌む傾向が強かったため、後に求肥の字を当てたとされているそうです。



2008.9.21  松江 彩雲堂 ”彩紋(さいもん)”

 

水の都として知られる城下町松江は、京都・金沢と並んで茶処・菓子処としても有名です。
散策すれば、いくつもの和菓子屋を見かけることができます。
ショーケースの中には、色とりどりの生菓子が並んでいますが、
その美しい菓子は、決してよそ行きのものではなく、毎日のお菓子として日常で楽しまれているものです。
出雲の国では、のんびりとお茶を楽しむ時間が大切にされているんですね。

松江と、和菓子の関係を深めている理由は、松江藩七代藩主・松平出羽守治郷(不昧)公の存在だそうです。
不昧公は自ら不昧流という茶道を完成させ、
茶会で使われた和菓子の数々は、「不昧公好み」 として現代に受け継がれているそうです。

このお菓子”彩紋”は、宍道湖に沈む、夕日が彩る幻想的な斜光をイメージして作ったそうです。
紫は白ごま、黄は柚子の香りを添えた、可愛らしいお菓子です。
いただきやすいスティック状で、抹茶のほかにも、珈琲・紅茶にも良く合うような気がいたします。

餡と求肥のお菓子ということでしたが、いただいててみるとその餡は、鶉豆であるような気がいたしました。
まったりとしたふくふくとした餡のお味。小豆の餡とは異なりました。
黄色は柚子風味、紫は白ごま風味。

いただく前は餅米に山椒の粉を混ぜて作る切り山椒かと思いました。
食感は似ていましたが、お味は違っていました。
柚子とごまの香りが口の中に広がる半生菓子でした。


松江 彩雲堂 ”彩紋(さいもん)”は、楽天で購入できます。



2008.9.4 京菓子司 末富 ”うすべに”


   

亀末広で修行した、初代が、明治26年(1893)に暖簾分けし、
創業した下京区の松原通りにある和菓子屋さんです。
寺社の御用達でしたが、戦後、「野菜煎餅」のヒットから、 一般向けになったそうです。
現当主は、銀座の松崎煎餅の修行後、昭和45年に三代目を継承し、
大学での講義や、執筆活動でも著名な人でもあり、京文化の啓蒙を行っていらっしゃいます。
その存在は先日放映(2008・9・9)NHKの”プロフェッショナル”の出演で、
そのお仕事の流儀を拝見できました。
菓子作りと向き合う時に心に刻む言葉、「一期一会」。心に響きました。

鮮やかな水色に檜扇を 描いた華やかな包装紙。
これは、色彩の美しさで定評のある、日本画家、池田 遙邨(いけだようそん)画伯の手によるものだそうです。
この水色は、「末富ブルー」 とも呼ばれていて、
印刷の作業で、特別な作り方をしている、凝ったものであるということです。
質の高いお使いものの象徴として、定評があるのに納得です。

今日いただいたお菓子、”うすべに”は末富(すえとみ)の初代が、茶道薮内家との交流から発案した、
茶人とのコラボレーションのお品。
そのつつましい風情と抑えた色調、甘いお菓子を想像していただくと、頭のなかに!マークが飛び出します。
今流行りの塩味を感じるのです。

1箱12枚入り、1260円。包み紙やお箱も、とってもお洒落ですが

4枚ずつが紙に包まれ入っているその姿も、丁寧な仕事を感じます。
老舗ならではの、心遣いですね。

薄いピンク色した軽いお煎餅のようなお菓子は、お米の香りが良く、品があります。
お煎餅部分には、お砂糖がかけられていて、じゃりじゃりとした食感です。
二枚のお煎餅に挟まれているのは、梅肉餡です。
これが透けて、外見が、ほんのりピンク色です。
梅肉の酸味と、ほんのり味わえる塩気。絶妙なバランスです。


末富さんはは京菓子老舗界にあって「高級ブランド」であります。
レベルの高いお菓子を作りをされ、茶人・茶道関係者とのパイプが太いらしいです。
それだけに お客さまの信頼を裏切らないということがあるのかもしれません。
「いちげんさんお断り」の、まさに、京菓子老舗界の「高級ブランド」の菓子処ですが、
このお干菓子なら、店頭で気軽に購入でき、お使いものとしても洒落たお品になりそうです




2008.9.4 銀座かずや ”かずやの煉”(抹茶)

 

煉り菓子の”煉”と書いて、”ren” と読む”かずやの煉”。
その存在は、耳にしてはいたものの、なかなか口にするチャンスに恵まれませんでした。
出会いまで3年の月日でした。

9月4日のお稽古の日に、このお菓子を選んだ時に、
「誰でもピカソ」というTV番組で取り上げられるという情報があり、急いで予約をいたしました。
危なかったです。また、その機会を逃すところでした。
今、電話が繋がらないそうです。予約も2~3週間待ちとのことです。

第21回神奈川県名菓展菓子コンクール技術賞受賞商品。
この賞を獲得した当時、このお菓子は”抹茶のお豆腐”という名前で出品されたそうです。
このお菓子は2年の歳月を費やし、完成させたという創作和菓子ですが、
それまでこのお菓子の職人、古関一哉さんは、板前さんだったということで、
その職歴から、コンクールの参加を断られたという、エピソードもあるそうです。

もともと、銀座7丁目の路地裏にある小料理屋を、日中だけ間借りし、
1日192個の限定で、和菓子を販売したのが、”銀座かずや”の始まりだったということです。

2005年9月13日”「銀座かずや”が、オープンし、
現在のお店は有楽町に在り、1坪ほどの小さなお店で営業されています。
ネット販売や、ウェブサイトはお姉さまが管理なさっているご様子。
なんだか、そんな兄弟愛に、和の心、感じちゃいます。

一番こだわったという食感は、まったりとして滑らかな舌触り。
微妙な火加減、タイミングで長時間煉り上げるそうですが、
まるで洋菓子のようで、口の中に広がる風味が絶妙でした。

なめらかプリンのような食感は、今時のお菓子という立ち居地でしょうか?
つるんとして瑞々しく、八女星野村の極上抹茶を使用しているのが、美しい色と香りで感じ取れました。

”かずやの煉”は抹茶のみで、
材料は 最も適したもの、身体によいものを選び出し、
化学添加物、着色、保存料等は一切使用していないそうです。
そんなこだわりも、美味しさの秘密の一つのようです。

他に煉り菓子、数種(カップ入り)などがありますが、
原材料を見ると、葛粉を使用しているのはこの商品だけのようです。
ババロアとは食感、風味など異なりますが、牛乳を使っているので、洋の感じもいたします。

この日は、お菓子をいただいた後に、お抹茶をすすります。
抹茶のダブルパンチで、ノックアウトでした。
このお菓子は、お煎茶、もしくは紅茶でいただくのも、よろしいのかもしれません。




”かずやの煉”が 消費期限2日に対し、パック入りは6日。
” 煉り菓子”(カップ入り)もいただいてみました。

【煉り抹茶】高級宇治抹茶をふんだんに使用した、上品なほろ苦さで、まったりした濃厚な味わい。
【煉り苺】フレッシュな苺に、ミルクを加え煉り上げた、女性に人気の一品。
【煉りみるく】ねっとり滑らかな、濃厚なみるくの風味の口どけを楽しめます。

こちらは、”かずやの煉”に比べ、滑らかさ、口どけ感に物足りなさを感じました。
パックという形態は、笹の葉に包まれた瑞々しさに、かなわないのは仕方ありませんね。


 


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