炉・薄茶・流し点
■流し点について■
 「流し点」は、特殊点前の一つで、侘びた趣のある点前で、広間や多人数の客を招く場合には不適当であるお点前ですが、季節を問わず炉の時期にも風炉の時期にも行なわれる点前です。

 炉の場合は炉正面に居前を決め、水指は炉の右側に置き、棗と茶碗を普通点前の時に棗と茶碗を置く場所に斜めに流した形に置き合わせます。
 客の真向かいに座って点前を行う亭主が、親しい方を一人か二人程度、客を呼び、和やかに語り合いながら茶を点て、主客とともにくつろいで楽しむ点前です。

 古くから伝わってきたものであるそうですが、風炉の流し点は、圓能斎宗室が明治二十八年ごろに再興、風炉を常据えの位置より畳十目ほど客付に寄せて行ないます。水指は貴人畳の角に置き、柄杓は使取りの形式となります。

● 点前は薄茶に限られています。

点前にかかる前の準備

・ 薄茶器に中高になるようにお茶を入れる。
・ 茶筅は、水で清める。(茶巾、茶杓とともに、茶碗に仕組む)
・ 水指に八分目の水を入れる。
・ 炉用の竹の蓋置を使用(節を中ほどに切った中節)

・ 釜の蓋をきっておく。

・ 帛紗を腰につける


●  菓子器はその前に正客の前に出しておく。


点前

■茶碗を運び出す■

1、水指を建付けに置き、茶道口を開け、両手を揃え、主客総礼をします。(
のおじぎ)

2、水指に手のひらがぴたっと付くように持ち、状態を起こしながら、水指を持ち上げ、右膝から立ち上がり、敷居を右足で越す。

3、点前畳に進み、客付に向いて座り、釜の鐶付と水指の中心を揃えて水指を置く。

4、さがる時は、左膝から立ち上がり、敷合わせを左でこして水屋にさがる。

5、次に右手に棗、左手に茶碗を持ち、右足から席に入る。

6、炉正面の通常より居前より少し左寄り、炉正面の少し斜め上座を向いて、炉縁の角と、通常の薄茶点前で水指を置く位置との間に座り、棗、茶碗を斜めに炉縁の角から流して、同時に置き合わす。

7、水屋に下がって建水を左手に持ち、席に入り、茶道口を閉める。点前座に進み、炉正面に向いて、炉縁から畳の目数で十六目(24cm)ほど内側にひざが来るように居前を決める。

8、建水を体の左に置き、柄杓を取って構え、(鏡柄杓)右手で、建水の中の蓋置を取って水指の正面、畳の縁外に置く。

9、柄杓を体と平行に縦に蓋置に引く。

10、左手で建水を少しあげて、居ずまいを正す。

■棗、茶杓を清める■

11、茶碗を左手で取り、体の正面で右横を右手に持ち替え、ひざ前少し向こう置く。


12、右手で棗を取って、茶碗とひざの間に置く。

13、左手で帛紗を取って、捌く

14、棗を左手で横から取り、棗を清める。そのまま帛紗を握り込み、棗をさきほど茶碗を置きつけた位置に置く。

15、帛紗を捌き直して、左手のひらにのせ、右手で茶杓を取り、清め棗の上に置く。

■茶筅通し■

16、帛紗を左手に持たせたまま、右手で茶筅を取り、先に棗のあった位置に置く。

17、茶碗を手前に引く。

18、帛紗を左手の人差し指と中指の間にはさんだまま、柄杓を取って構え、右手で帛紗を取り、釜の蓋にのせ、手前側を開け、露をきり、蓋を蓋置に置き、帛紗を柄杓の柄の内側を回って左膝前に仮置きする。(女性または、釜の蓋が共蓋か南鐐の場合)

19、、茶巾を茶碗から取り出し、釜の蓋上、つまみの手前に体を平行に置く。

20、柄杓を持ち直し、湯を汲み、茶碗に入れる。

21、柄杓を釜にあずけ、切り止めは外隅の延長線上に置く。

22、右手で茶筅を取り、茶筅通しして、穂先を清める。茶筅を元の位置に戻す。

23、茶碗を右手で取り、左手に持ち替え、湯を建水にあける。

■茶碗を清める■

24、右手で茶巾を取り、茶碗を清め、茶碗を置き、茶巾を釜の蓋の上に戻す。

■茶を点てる■

25、右手で茶杓を取り、正客に、「お菓子をどうぞ」と挨拶する。

● 客はこれを受け、次礼をして菓子器をおしいただき、懐紙を出して、菓子を懐紙にとり、次客に菓子器を送る。(左に菓子があった時に礼、真中に移動しいただき、左に移動する)

26、左手で棗を横から持ち、右手の茶杓を握りこんで茶碗の左上で蓋を取り、右ひざ前に蓋を置く。
  茶を二杓ほどすくい茶碗に入れ、茶杓を握りこんで棗の蓋をし、茶杓を右手に持ったまま左手で棗を元の位置に戻し、茶杓を棗の上に戻す。

27、水指の蓋を右、左、右と三手で取り、蓋のつまみが水平になって水指側に向くように、水指の右側(下座)に立てかける。

28、柄杓を持ち、湯を汲み、茶碗に入れる。残りを釜に返し、静かに柄杓を釜にあずける。

29、その手で茶筅を取り、茶を点て、茶筅を引きあげ、元の位置に戻す。

30、茶碗を右手で取り左掌にのせ、正面を正し、炉縁と水指の間、鐶付より向こう側にに出す。
● 正客は茶碗が出されると引きに出て、自席に戻ると、茶碗を縁内に取り込み、茶碗を縁内次客の間に置き、次客に「お先に」と、会釈し(行のおじぎ)茶碗を膝前真中に置き、「お点前ちょうだいします」(真のおじぎ)と挨拶する。 右手で茶碗を取り上げ左手にのせ、感謝の気持ちでおしいただき正面をさけ時計回りに回しいただく。

31、亭主はこれを受ける。(行のおじぎ)客の一口で亭主は帛紗を右手で取り、左手に打ちかえして腰につける。
● 客は茶を喫み、最後に吸い切りをして、喫み口を指先で清め、その指先を懐紙で清める。茶碗の正面を正し、縁外に置き、拝見をする。茶碗を左掌にのせ、正面を正し(反対に回す)、出された位置に返す。


32、亭主は茶碗が返ると、右手で取り、左手で扱って右手で膝前正面に置く。

33、湯を汲み、茶碗に入れ、柄杓を釜にあずける。左手で茶碗を取り、湯を建水にあける。
● この頃次客は、菓子器を自分の前に持っていき、頃合をみて菓子の挨拶をし、菓子を懐紙に取り、菓子器を上座に送って菓子をいただく。

34、亭主は次客のために茶碗を清め、茶を点てる。
● 正客は、床の掛け物や花、花入について尋ねるなどする。

茶が点ち、定座に出されると
● 次客は取りに出て、自席に戻り、縁内、右膝横に置き、正客に 「お相伴いたします」 と挨拶し」、膝前真中 「お点前頂戴いたします」 と挨拶し 茶碗を取り、感謝の気持ちで押し頂き、正面をさけ回し、いただき茶碗を清め、指先清め、拝見し、返す。
● 次客がお茶をいただいている頃、正客は菓子器を持って出て、正面を正し、水指の下座に置く。

35、次客から茶碗が返されると、茶碗に湯を入れ、建水に湯を開け、茶巾で清める。

36、正客から自服があると、それを受け、茶を入れ、茶を点てる。

37、茶碗を定座に出す。
● 正客は 「どうぞ、ご自服ください」 と挨拶する。

38、亭主は、水を一杓、水指から釜に注いで、柄杓を釜にあずけ、

39、客付にまわり、菓子器を押しいただき、正面に正して少し向こうへ突いておく。(亭主は席中で菓子をいただかない)

40、亭主は茶碗を膝前に置き、「お相伴いたします」 と挨拶し、茶碗を手にとって感謝し、茶碗の正面が向こうを向いているのをわずかに手前にまわし、茶をいただく。
●正客は、菓子器を下げに出て、自分の正面に置く。

41、亭主は茶を飲み終えると、茶碗を大きく反時計まわりにまわし、正面を自分の方に向け、炉正面にまわって、茶碗を膝前に置く。

42、湯を汲み、茶碗に入れ、柄杓を釜にあずける。左手で茶碗を取り、湯を建水にあける。
● 正客は次客に 「もう一服いかがですか」 と尋ねる。次客が 「十分でございます」 と答えると、正客はこの湯を建水にあけたタイミングで 「どうぞおしまいください」 と挨拶する。

43、亭主は右手でこれを受け、茶碗を右手で膝前に置きます。「もう一服いかがでしょうか」 と尋ね、
● 正客から 「十分ちょうだいいたしました」 と挨拶があると、

■しまいつけをする■
●正客は菓子器を上座に上げる。

44、亭主は右手で柄杓を取り、水指から水を汲み茶碗に入れ、柄杓を釜にあずけて、しまいの茶筅通しをする。

45、茶筅を棗の横に置き、茶碗を右手で取り、水を建水に捨て、茶巾を右手で取って、茶碗に入れ、茶筅を茶碗に入れる。

46、右手で茶杓を取り、左手で建水を下げる。

47、その手で腰の帛紗を取り、茶杓を持ったまま捌き、 茶杓を清め茶碗にふせて置く。

48、帛紗の茶粉を建水の上で払い、腰につける。

49、棗を右一手で少し右に寄せて、元の位置に置き合わせる。

50、茶碗を右、左を二手に持ち替えて左手で棗の横に置き合わす。

51、柄杓を上から取り、、水指から水を汲み、釜に水を一杓さす。

52、左手で柄杓を迎えにいき、構える。

53、釜の蓋を取り、手なりに蓋を少しきって閉め、柄杓を右手に持ち替え蓋置に置く。

54 、水指の蓋を右、左、右と三手で閉める。
 この時、正客から 「お棗、お茶杓拝見を」 と請われると、これを受ける。

55、柄杓をすぐに右手で取って左手に持ち替え、合を落として建水にたたむ。

56、右手で蓋置きを取って左の手のひらにのせ、棗を茶碗の正面にまわり、

57、蓋置を右手で上を持ち、左手で横を持ち直し、建水の後ろに置く。

■棗と茶杓を拝見に出す■

58、
右手で茶碗の右手前を持ち、一手で道具畳中央に置き直す。

59、棗を右手で取り、左手のひらにのせ、客付き (炉縁の外側の前) にまわり、棗を外隅の延長線上に置く。

60、帛紗を捌いて棗の甲を清め、蓋裏をしらべ、蓋を膝前に置き、棗の口を清めて帛紗を握りこみ、蓋を閉め、帛紗を膝前に置き、棗の正面を正し、右手で出す。(位置は炉縁右横の鐶付の向こう)

61、帛紗を腰につける。

62、
先ほどと同じように斜め左に体の向きを変えて、右手で茶杓を取り、左手に持ち替えて、客付きにまわり、棗の手前に客に正面を向けて、右手で縦に出す。


● 客は建水が引かれると棗、茶杓と出された順序に引く。
 棗、茶杓と縁内に取り込み、亭主が水屋に入ってから次礼して、棗、茶杓の順に縁内で拝見をし、終わると出会いで返し、出された反対に返す。


■建水を下げる■

63、再び斜め左側にまわり、左手で柄杓、蓋置右手に持ち、建水を左手で持ち、左膝から立って勝手付に向かってまわりながら(建水回り)立ち、水屋に下がる。


■茶碗、水指を下げる■

64、再び席に入って、茶碗を右手で取り、左掌にのせ、右手で茶碗を横から持って水屋に下がる。


●正客は棗と茶杓を引きに出て、自席の縁内にあずかる。


65、亭主は、再び席に入って、菓子盆を下げる。

66、亭主は、再び席に入って水指の正面に座り、両手で水指を持って下がり、茶道口正面に水指を置いて坐り、襖を三手で閉め、拝見の返るのを水屋で待つ

●連客は会話を楽しみながら道具を拝見し、出会いで返す。

■問いに答える■

67、拝見物が返ったら、茶道口を開けて席に入り、道具正面に坐り、正客からの拝見物の問いに答える。

「棗のお形は?」「お塗りは?」「茶杓のお作は?」「ご名は?」の問いに

「棗は中棗でございます。」

「中村そうてつで、ございます。」

 「杓は大得寺、利休で、ございます。」「紅葉でございます」などと答えて、

 「いずれもありがとうございました。」挨拶する。

68、右手で棗を取り、左手にのせ、右手で茶杓を持って茶道口を出て座り、

69、建付側に茶杓を置き、茶杓の右に右手に持ち替えた棗を置き、主客総礼して襖を閉める。


◆お稽古の手引き◆ 

●客の心得●

●割り稽古●




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