◆お稽古のお菓子◆

2008年11月6日

塩瀬総本家”織部饅頭” 鶴屋吉信”亥の子餅” 駿河屋 ”季節の干菓子(菊)”
11月は開炉の月。
茶人に取って「茶人の正月」とも言われる、大変大きな節目の月だそうです。
開炉は現今では、一般的に、11月最初の亥の日に炉開きをし、ぜんざいや亥の子餅で祝います。
また、この月は「口切り」といわれ、茶壺の封を切り、今年の新茶を賞味する節目の月でもあります。
お道具では、古来より三部、
すなわち『新瓢のふくべ』、『織部』、『伊部(備前)』の3点を取り入れながら
正月と同じく、松竹梅や、松菊などお目でたいものに加え、
『柚や橙』、『柿』、『紅葉』、『銀杏』などの季節感を添えたものを、取り合わせるといいます。


2008.11.6 東京明石町 塩瀬総本家 ”織部饅頭”

織部饅頭は、千利休の弟子であった武将が、創設した焼き物の織部(おりべ)の意匠を
饅頭に表現した、薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)です。

塩瀬総本家の始祖・林淨因は、主に寺院を対象に、奈良でお饅頭商いを始めたそうです。
淨因は、中国で肉を詰めて食べる「饅頭(マントゥ)」にヒントを得て、
肉食が許されない僧侶のために、小豆を煮つめ、
甘葛の甘味と塩味を加えて餡を作り、これを皮に包んで蒸し上げました。
お饅頭の、ふわふわとした皮の柔らかさ、小豆餡のほのかな甘さが、
寺院に集う上流階級に大評判となったそうです。
当時、日本の甘味には柿や栗の干したもの、お餅に小豆の呉汁をつけるお汁粉の元祖のようなものしか
ありませんでしたので、画期的なお菓子の誕生だったというお話です。
淨因のお饅頭は、後村上天皇に献上されるまでになり、
天皇はお饅頭を大変喜んで淨因を寵遇し、宮女を賜りました。
当時、一商人が宮女を下賜されるということは、特別の栄誉でありました。
結婚に際し、淨因は紅白饅頭を諸方に贈り、子孫繁栄を願って大きな石の下に埋めました。
これが「饅頭塚」として、林淨因が祀られている林神社に残されているそうです。
今日、嫁入りや祝い事に紅白饅頭を配る習慣は、ここより出ているものだということです。
それから幾代か経て、商いの場は京都に移り、林淨因の子孫、紹絆は、
中国で製菓を修得後日本に帰り、中国の宮廷菓子に学び、
山芋をこねて作る「薯蕷饅頭」を売り出しました。
この「薯蕷饅頭」が現代塩瀬に伝わるお饅頭の元となったということです。

時代は下り、天正3(1575)年の長篠の合戦。
家康出陣の際、塩瀬の七代目林宗二が「本饅頭」を献上しました。
「本饅頭」とは、大納言が入った小豆餡を薄い皮で包み、丁寧に蒸しあげた、林宗二考案の品です。
家康は、本饅頭を兜に盛って軍神に供え、戦勝を祈願しました。
この逸話から、本饅頭を「兜饅頭」とも呼ぶそうです。

この「本饅頭」は、現在も昔と変わらない製法で作っている
歴史的趣の深い、塩瀬自慢のお饅頭だそうです。
塩瀬饅頭は、大和芋の皮をむき、摩り下ろすところから始まる職人の手による手作業よるものだそうです。
耳たぶより少し柔らかい固さの皮に、餡を入れて蒸し上げることで、
本当に上品なお饅頭が出来上がるのだということです。
この日は旬ということもあったのか、普段よりその大和芋の香りを感じました。

また、塩瀬のお饅頭の餡は、北海道十勝の音更(おとふけ)町の小豆を使用しているそうです。
使用されている“エリモショウズ”という品種は、餡の風味が良いことから、菓子職人に大変好まれていて、
音更産の小豆からできた餡やお菓子は、大変美味しいと、評判が良いということです。

東京明石町 塩瀬総本家 のお饅頭は、楽天で購入できます。



2008.11.6 鶴屋吉信 ”亥の子餅”


亥の子餅の由来については、平安時代頃に中国から日本の宮中に伝えられ、
宮中の年中行事の一つになったとされています。


旧暦の10月の「亥の日」の 「亥の刻(午後9時~11時)」 に餅を食べると、万病を除くと考えられ、
猪子形に作った「亥の子餅」を、朝廷に献上する、年中行事というものがあったそうです。

また、亥は、火難を逃れるという信仰があり、江戸時代には亥の日を選んで、炉や炬燵を開き、
火鉢を出し始める風習が、あったといい、
今でも、茶道では、この日を炉開きの日として、亥の子餅を茶席菓子とする習わしがあります。


さらに、猪の子はたくさん生まれることから、子孫繁栄をもたらすともされ、
亥の子餅は贈答品にも用いられたそうです。

(今年は11月7日、19日)



2008.11.6 京都先斗町 駿河屋 ”季節の干菓子(菊)”
 

明治時代、五花街のひとつである先斗町に店を構えてから、現在で4代目の駿河屋さんは、
貴重な本わらびを使ったわらび餅と、上品な甘さのこし餡が絶妙の味わいの“ひとくちわらび”と、
その年出来た、新しく細い青竹に、あっさりした上品な水羊羹を流し込んで、
笹の蓋で閉じている “竹露(ちくろ)” が、代表銘菓だそうです。

店頭 に並ぶ菓子も、花街らしく、小粋で、洗練されたものばかりということですが、
この日いただいた干菓子も、その型の美しさが想像できる、雅なお色の、はんなりした姿のものでした


  



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